そして、誰もいなくなった

そして、誰もいなくなった

2021.05.12 - 2021.05.29

西村大樹

展覧会の概要

この度、MARUEIDO JAPANでは西村大樹個展「そして、誰もいなくなった / And no one was left」を開催いたします。

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そして、誰もいなくなった

僕が風景を描くにあたって環境問題に執着し、人新世(アントロポセン)、人が環境に与えた負荷、破壊や汚染という目に見え難い事実を含んだ自然を見つめ始めたのは野鳥研究者で環境アセスメントであった父の他界と東日本大震災が起こったことが影響している。当時、それまで世の中に隠されてきたものが一気に噴出したように感じていた。身近な人がいなくなり、戦後の日本の精神的なテーマ(平和のシンボル、原子力、未来の明るいエネルギーという幻想)が原発事故によって吹き飛んだ。僕はその時、おそらく永遠に続きそうな日常から目が覚めたのだと思う。

それから僕は自分たちが生きている社会や、地球環境に関心を持った。自然、人の歴史、人類が地球という環境に与え続けた取り返しのつかない問題を再考させた。そして2020年世界中に未曾有の感染病が広がり、そして現在もその渦中に僕たちはいる。コロナ渦の中、僕は感染病の蔓延する社会要因、生態系の変化、農地開発や森林伐採の結果、野生動物と人間の接触機会が増加し感染病が蔓延することを考えた。そうすると昨今頻発するアマゾンやオーストラリアなど世界中での山火事の光景が、人類に対して現在を予見せんがための出来事のように感じられた。

僕の描く世界は仮の世界だ。しかし現実を異なる視点から複数的に捉え未来を想像し統合したもう一つの僕のリアリティだ。人間には想像力があって、未来を想定することができる。僕たちの国は自然災害や地震が多発して、その度にリセットされるような感覚があり、どうせ自然にはかなわないから「何かをしても無駄だ」という思いが心の何処かにあるのかもしれない。それでも様々な未来を想像し、考え方や生き方を、時には人間以外の視点から理解し学んでいく必要があるだろう。過去は現在と未来を左右する。僕は仮(絵画)の世界から現実を再考し、世界のあり方をより深く理解していけたらと考えている。

2021年3月
西村大樹

【360°View】
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アーティスト

西村大樹
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