crossing points - A Scene of Light

crossing points - A Scene of Light

2018.10.02 - 2018.10.20

横溝美由紀

展覧会の概要

この度、MARUEIDO JAPANでは、横溝美由紀の個展「crossing points - A Scene of Light」を開催いたします。

本展覧会「crossing points 」は、横溝が近年精力的に発表している「line」を京都と東京の3つの画廊を会場に、それぞれ異なる視点から多角的にアプローチし、その交わる視線の先に立ち現れる光景を探る試みです。
 ART OFFICE OZASA では、「line」の基となるインスタレーション「red cage」を、GALLERY RIN では、「線で織りなす宇宙」をテーマに掌中の作品を、そして、MARUEIDO JAPAN では、「line」の大作のほか、「red cage」と「line」を繋ぐ象徴的なインスタレーション「wall drawing」を中心に展示します。

 「line」は、キャンバスに絵具という絵画の形式をとっていますが、横溝は彫刻と断言します。弓のように張った1本の糸に絵具をまとわせ、その糸を指で弾く方法で制作される「line」は、時に1点の作品が完成に至るまで数千回となくその行為が繰り返されると言います。確かに行為そのものは彫刻的ですが、キャンバスという限られた矩形の中で繰り返される行為による痕跡は、複雑に絡まり合い次第に新たな空間を浮かび上がらせてきます。結果として作家の言葉から離れ、より絵画的なイリュージョンを生み、シンプルな表情の中に複雑な構造を抱え込んでいるように見えます。

 日本で初めて制作される「red cage」は、「line」の基となるインスタレーションで、2003 年台湾のTaipei Artist Village に招待された際に発表されました。床面を真白に塗り、赤い液体を満たした透明チューブを空間全体に張り巡らせ、ミニマルで緊張感のある小屋(cage)を創出させました。台湾へ行く直前の健康診断の採血中に血液が一瞬止まったと語る横溝は、台湾に到着した直後に道端でおびただしい数の血痕を目撃します。(これらは後に血痕ではなく、覚醒作用のある檳榔による唾液の痕跡と判る。)真白で清潔な床に赤い液体で満たされたチューブは生命維持の為の装置を想い起こさせますが、暖かな光に満たされた光景は、横溝の作品に一貫している覚醒された安らぎの場なのかもしれません。
 「wall drawing」は、「red cage」と「line」とを繋ぐ象徴的な作品で、垂直に弾かれた、たった1本の糸の痕跡が、その飛沫と共にギャラリーの壁面に直に記されます。それはあたかも空間そのものを支持体とした絵画のようでもあり、床から天井まで立ち上がる絵画という名の彫刻のようでもあります。数百回、数千回と弾かれて制作される「line」もこの1本の痕跡から始まります。かつてフォンタナが無垢なキャンバスを前にナイフで切り裂き、新たな時代を予見させたように「wall drawing」は空間そのものを切り裂く行為のように映りす。
 
 この度、「line」と共に「red cage」、「wall drawing」を同時期に展示することで、初期のサイトスペシッフィクなインスタレーションから、近年の自由度の高いキャンバスへと繋がる横溝の確たる意志が見てとれる貴重な機会となります。

 ぜひ3会場のその交わる視線の先に立ち現れる光景をご高覧賜りますよう、何卒よろしくお願い申しあげます。

アーティスト

横溝美由紀
  • 横溝美由紀