2023.10.13 - 11.04
門田光雅
PRIME SPIRAL
素数は、1と、その数自身でしか割り切ることができない数字だ。無限に存在するとされるが、その出現する法則性は、まだ分かっていない。素数を簡単なルールに従って渦巻くように平面上に配列していくと、特徴のあるパターンが次第に現れてくる。条件によって、垂線や水平線、対角線、放物線などの規則性が見え始め、さらに膨大な量の配列を俯瞰すれば、まるで銀河のような美しい形状や、神々しい放射線を描くこともある。この素数の螺旋による可視化は、従来は捉えられないはずのものにも何らかの傾向が存在していることを意味し、もしかしたら真理にも通じる隠れたヒントが、そこにあるのかもしれない。
芸術家は、その自身の内側から湧き上がる興味や欲求、衝動に従って、創作を尽きることなく続ける。初めから答えなどなく、正しい距離や間合いなども分からず、支離滅裂に矛盾していて、一般的には理解に苦しむこともある。ただそのような簡単に割り切れない物の中には、何らかの新しさや純粋さ・強さが含まれていて、芸術家たちは滑稽に今日まで絶える事なくその原石を探り続けている。文脈や歴史といったその痕跡を結んだものは、現在でも、まだまだ混沌として辿々しい畝りにしか見えないが、もし今後、私たちが絶えることなく無限の研鑽や挑戦を続けるのであれば、それは遠い未来に、美しい形状や秩序を持った総体として成り立つ日が来るのだろうか。
万物の深淵への入り口が、葛藤の螺旋を俯瞰したときに浮かび上がるのかどうかは分からないが、表現と向き合い巡り合う原初の歓喜の中に、全ての物事の始まりにも似た小さくとも確かな手応えがあることを私は知っている。
2023年8月 門田光雅